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拡大床装置の作り方
こんにちは。
今回は前回と同じく、矯正装置の作製方法についてです。拡大床装置についてご説明させていただきます。
拡大床装置
拡大床装置の製作方法です。拡大床装置はこのような装置です。
製作の手順を簡単に示すと
①ワイヤー屈曲
②床部分の製作
③研磨仕上げ
このような流れになります。各工程をさらに詳しく説明していきます。
①ワイヤー屈曲
まずは作業用模型を用いて、維持装置としてのクラスプを屈曲します。クラスプとは、画像の矢印部分のように歯に掛けているワイヤーです。どのクラスプも主に0,7~0,9㎜径の矯正用のワイヤーを用います。
主要なクラスプの種類と特徴は以下の通りです。
- 単純鉤(Cクラスプ)・・・屈曲は容易だが維持力が弱い。半萌出の歯にも用いることが出来る。基本は唇頬側をつかむ形状だが維持力を高めるためにクラスプを遠心舌側まで延長することもある。
- ボールクラスプ・・・歯間の下部鼓形空隙のアンダーカットにボールを挿入することで維持を得る。既製のものも多いが矯正用線に銀ろうをロウ着して製作することもある。その場合、先端のボール部分の大きさや形状を個々に調整でき、適応範囲が広げられる。
- アダムスのクラスプ… 単一臼歯の近遠心のアンダーカットに維持を得る。アローヘッドの部分が歯冠のアンダーカットを抱き込む形状なので、維持力が強く、また変形も少ない。乳臼歯、永久歯などどんな歯にも適応できる。
- トライアングルクラスプ・・・ボールクラスプと同様に歯間の下部鼓形空隙のアンダーカットに維持を求める形状。既製のものを用いて屈曲することが多いが矯正用線から屈曲することも可能。
- シュワルツのアローヘッドクラスプ・・・こちらも歯間の下部鼓形空隙のアンダーカットに維持を求める形状。ボールクラスプやトライアングルクラスプより弾性があり維持力は大きい。屈曲には専用のアローヘッド製作用プライヤーが必要。また、孤立歯には適用できない。
どのクラスプも、屈曲時に維持歯の萌出が不完全でアンダーカット量が不十分な場合は、歯頚部を削り込んでから屈曲します。
また最終的に床の内部にくる脚部の形状は、ループ型やウェーブ型に屈曲し、床内部で脚部が回転したり床から脱離しないように工夫します。
次に唇側線を屈曲します。唇側線とは、画像の矢印部分のワイヤーです。
通常、正中部を拡大する装置には用いないことが多いのですが、前突歯を舌側移動させたい場合や装置を所定の場所保持しておきたい場合、エラスティックをかけるフックを付けたい場合などは適用します。
太さ0.7~0.9㎜径の矯正用線を用いて前歯に一点接するようにアーチを作り、犬歯の位置でループを作り舌側へ渡します。前突歯など移動させたい歯牙だけに接触させて屈曲したりと設計は症例により様々です。
その他、必要に応じて舌側弾線やエラスティック用フックを屈曲します。
②床部分の製作
歯科用レジンを用いて床の部分を製作します。先ほどまでの画像の、歯の内側にある黄色や青色の部分です。
常温重合レジンを用いた製作方法には
- 筆で少しずつレジンを築盛していく筆積み方
- 振りかけるようにして築盛する積層方
- モノマー(液)とポリマー(粉)を混ぜてから模型に圧接する混和方
の3つがあります。
前工程で屈曲したワイヤーを作業用模型に戻し、拡大ネジは設計部位へセットしワックスなどで固定します。作業用模型にレジン分離材を塗布し、レジンを築盛していきます。
③研磨仕上げ
レジンの重合が完了したら、仕上げに向けて細かい部分の調整、研磨をしていきます。
まず模型から装置を取り外し、はみ出しているレジンを削って整えます。装着時の違和感を減らすため厚みも調整します。表面を滑らかに整えたら艶出し仕上げをし、拡大ネジ周りを分割します。最後に洗浄し、作業用模型に戻して適合をチェックします。
これで拡大床装置の完成です。
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